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年金は誰がいつどう作った? 積立型から賦課方式へ、制度の進化とその末路

年金は「払った分、ちゃんと返ってくるの?」

そう思ったことのあるあなたへ。

私たちが毎月払っている“年金”とは、いったい誰が、いつ、どんな目的で作り上げた制度なのでしょうか?そして、なぜ今「将来もらえないかもしれない」と言われているのでしょうか?

この記事では、年金制度のルーツから制度の進化、現在抱えている問題点、そして未来予測までを解説します。


◉ 世界初の年金制度はドイツから始まった

世界で最初に“国家制度としての年金”を導入したのは、19世紀末のドイツ帝国。

そう、あの鉄血宰相「ビスマルク」です。

1889年、ビスマルクは“老齢保険法”を成立させ、70歳以上の高齢者に年金を支給する制度を作りました。

当時の平均寿命は45歳ほど。 つまり、実際に年金を受け取る人はごく一部、という設計だったのです。

目的は社会福祉というより、“労働者の不満をなだめて社会主義の台頭を防ぐ”こと。

年金制度はもともと政治的な安定装置だった。

この構造は現代でも基本的に変わっていません。


◉ 日本に年金がやってきたのはいつ?

日本で最初の年金制度は、軍人や官吏を対象にした「恩給制度」に遡ります。

その後、一般国民を対象とした公的年金制度が整備されていきました。

  • 1942年:労働者年金保険法(現・厚生年金の前身)
  • 1954年:厚生年金保険法施行
  • 1959年:国民年金制度発足(農業者・自営業者等も対象)
  • 1961年:全国民の加入が義務化(国民皆年金)

この時点での制度設計は「積立型(ちょちくがた)」と呼ばれ、働いている間に保険料を積み立て、老後にその分+運用益を受け取るという仕組みでした。


◉ 積立型から賦課方式へ:なぜ変わったのか?

積立型は理論的には公平な仕組みでしたが、以下の問題を抱えていました。

  • インフレリスク:積み立てた額の実質価値が目減りする
  • 人口構成の急変:急増する若年人口に対応しきれない

そこで政府は1960年代以降、制度を賦課方式に転換しました。

賦課方式とは、現役世代が支払う保険料で、今の高齢者の年金をまかなう仕組みです。

つまり、「今の自分の保険料=未来の自分のお金」ではないのです。

これは「世代間扶養」という美しい理念のもとにスタートしましたが、後に制度の根本を揺るがす大問題を引き起こします。


◉ 賦課方式の“落とし穴”と少子高齢化の衝撃

当初の想定はこうでした:

  • 現役世代3人高齢者1人を支える構図

ところが、2020年代に入ると状況は激変:

  • 現役1.3人高齢者1人を支える状況に突入

この結果:

  • 保険料は上昇
  • 年金支給額は減額
  • 支給開始年齢は引き上げ

いわゆる「三重苦」が現役世代を直撃しているのが現状です。


この画像は厚生労働省が作成したものであり、著作権は同省にあります。

◉ 年金財政の危機:5年に1度の財政検証が示す未来

厚生労働省は5年ごとに「年金財政検証」を行っています。

直近の検証(2019年)では、今のままでは所得代替率(現役世代の収入に対する年金割合)は50%未満まで低下すると予測。

対策として:

  • 支給開始年齢の繰り下げ(65→68歳、70歳案も)
  • 給付水準のスライド制(マクロ経済スライド)
  • 外国人労働者の受け入れ促進

などが議論されていますが、抜本的な解決には至っていません。


◉ それでも年金制度は続く。その理由とは?

では、制度が破綻するのかというと、それは政治的に極めて困難です。

  • 高齢者層の選挙影響力が大きい
  • 公的年金が生活基盤の人が多数
  • 年金破綻は「国家の信用失墜」につながる

結果、どんなに制度が苦しくても、「続けざるを得ない」のです。


◉ 自分の老後は自分で守る時代へ

これからの時代、年金制度は“最低限の生活保障”にとどまり、 本当の安心は「自力でつくる年金」=自助努力に委ねられます。

▶ 自力年金の構成例

  1. 積立NISA・iDeCo:少額でも始められる長期投資
  2. 副業による収入源の確保:収入の複線化でリスク分散
  3. 保険・住宅ローンなど支出の見直し:固定費を抑える

◉ まとめ:制度を知り、自分で戦略を立てよう

ビスマルクに始まった年金制度は、社会の安定装置として進化してきました。

しかし、日本においては少子高齢化と経済停滞の波を受け、その仕組みは大きく歪みつつあります

だからこそ今、私たちには

「制度を理解し、自分の老後を自力で設計する」

という視点が求められています。

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出典一覧:

  • 厚生労働省『公的年金制度のあらまし』
  • 財務省『財政制度等審議会資料』
  • 日本年金機構『年金制度の歴史』
  • 金融庁『つみたてNISAの概要』
  • 総務省統計局『人口推計』
  • ドイツ歴史文書館『Bismarcks Sozialgesetzgebung』